綾戸さんは40歳でメジャーデビュー。パワフルな歌唱力と同じくらいパワフルなトークで一躍人気者に。“コンサートチケットがもっとも手に入りにくい歌手”といわれ、数々のステージをこなしてこられましたが、デビュー10周年を迎えた昨年、脳梗塞を患った実母との時間を大切にしたいと音楽活動の休止を宣言。1年余りの時を経て9月から活動を再開なさいました。
「『(この先)そんな長くないのにリハビリはつらい』と、車いすになった母がいったことがあったんです。確かに、そりゃ、母のこれまでの人生と、これからの人生考えたら、ここから先のほうが短いですよ。これははっきりといえます。ですけど、私は母に、1日たりとも生きてる日を死んでるようにすごしてほしくはないんです」
「生きてるあいだにいいことって、あんまりないように思うんです。悪いことのほうが多いんですよ。でも悪いことがあったときのほうが、ちょっとしたいいことが、ものすごくよく見えるんですよね。しっかりうれしいためには苦労しないといけないと思います」
「音楽は個人の感覚なんです。だからジャンル分けっていうのは、しっかりしてないんです。ジャズをどこのジャンルに置くとかも個人の感覚なんですよ。でも、お客さんがこれ聴きたいという心のジャンルだけは、これはもうお客さんの心のなかにあるんです」
「国を変えるのは国ではなく人ですね。私が車いすを押してエレベーターに乗ろうとすると、若い子が車いすが降りる前に乗ってきたりします。私『降りー!』っていいます。みんな『あっ、どうも』なんていって、悪びれず降りますよ。人間、本当は、心のなかではいいことしたいんですよ。でも、知らないのでできないだけなんです。私たちのように手伝ってもらう立場のものが、あまりにもオーダーを出さないからできないんです。若い人のマナーが悪いのは、日本の年よりのせいでもあるんです」
本誌では紹介しきれなかった綾戸さんのお話のほんの一部です。
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